あなたはなぜ不幸か(行動経済学から)

最近はやりの経済学分野に、「行動経済学」というものがあります。
ちょっとIRとは離れるお話ですが、本日はそれを取り上げてみたいと思います。

近代経済学は、人間は経済合理的な行動を取るものである、ということを前提として理論を組み立てていますが現実にはそうでもない。合理的でない行動を取るのはなぜか、例えば、雨が降ると株価が思わしくない、とか月曜日の株価は高いとか...これをアノマリーといいますが、こんなことがどうして起こるのか、それを説明しようとする経済学の先端分野です。有名なところではセイラー先生がおられますし、日本では大阪大学の大竹文雄先生が論文やご本で大変わかりやすく紹介されています。特に大竹先生のご本は大変面白く、ご興味をお持ちでない方でも、例えば「競争と公平感」*1「経済学的思考のセンス」*2などは楽しく読めますし理解できますのでお勧めです。
さて、その大竹先生編集で「日本の幸福度」*3という本があります。その第2章に「あなたはなぜ不幸か」という論文が掲載されています。これは20歳から65歳までの全国6000人に対してアンケート調査を行った結果を集計し、論文として発表したものです。人の属性や所得と幸福度の関係を調査したものですが、これがまた、面白い。
ご参考までに要約の抜粋を記載します。
1.男性は女性より不幸であるが、喫煙するかしないで再度整理すると、男女差はあまりなくなる。(喫煙する人はどうやら不幸な人らしい)
2. 年齢が高いほど不幸(!!)
3. 所得が高いほど幸福といえるが、ある程度まで上がると飽和する。(ある程度の所得になるといくら上がっても幸福感は大きくならない。)
4.資産についても3と同じだが、幸福度が飽和する資産額はかなり低い。
5.都会に住む人は幸福
6.お金を人生の目標にしている人は不幸で、利他的な人ほど幸福
7.消費しても幸福度は高まらない。
8.他人の生活水準や所得を意識する人ほど不幸
9.せっかちな人ほど不幸
このほか、ギャンブルに対する分析もあって、パチンコと喫煙、競馬と飲酒はそれぞれ相関が高いそうです。

この調査から浮かび上がる不幸な人の姿は、『独身で他人の生活が気になり、「質素な生活をしたい」と自分にいいきかせ、「お金をためることが人生の目的」でヘビースモーカーでせっかちであり、他人はもちろん、親しい人にもお金をあげようと思ったことがなく、心配性な人』ということになるらしいのです。
私たちは直観的に、人を羨んだり、嫉妬したり、さげすむことはあまりよくないことだと知っています。
逆に、困窮する人に手を差し伸べたり、利他的な行動を取ることはちょっと気恥ずかしいけれどできれば取りたい行動だと思っている。人間の感情のメカニズムには、人の足をひっぱると不幸な気持になり、人を助けると幸福な気持ちになるというものが組み込まれていると考えてもいいかも知れませんね。
実は、こういう研究分野もあります。ずばり『神経経済学』*4。不確実な中で、脳はどのように意思決定するか、そのメカニズムの研究で、将来は犯罪防止にも使えるのでは、と期待されているようです。
面白い研究ですが、なんだか『時計じかけのオレンジ』を彷彿とさせて、ちょっと背中が寒くなります。

参考文献
1. 大竹文雄(2010) 『競争と公平感』 中公新書
2. 大竹文雄(2005) 『経済学的思考のセンス』 中公新書
3. 大竹文雄、白石小百合、筒井義郎編著(2010)『日本の幸福度』:33-73 日本評論社
4. Paul W. Glimcher, 宮下英三訳(2008)『神経経済学入門』 生産性出版





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