自社の株主(個人)に対するIR活動を行うために重要なこと。まず自社の株主から

一般に、上場企業の株主数(保有株式数ではなく)で最も多いのは個人株主です。企業の経営者やIR担当者は、最近よく「個人投資家向けのIRを重視する」といいますが、その前に、まずは自社の個人株主が満足するIR活動、株主還元を行っているかどうかを検証する必要があるのではないでしょうか。

これを検証するために、株主は企業に対して、何を求めるのかを考えなくてはなりません。仮説として以下の3点を上げることができます。
 ①1株当たりの当期純利益、1株当たり株主資本が年々増加すること
 ②配当や優待、キャピタルゲインを勘案して投資利回りが自分の基準(ベンチマーク)を上回ること
 ③情報開示が積極的に行われていること
当たり前といえばそうですが、企業のIR活動を見ていると、既存株主に対する処遇と自社の株主ではない個人投資家を勧誘するための活動を別物と考えているのはないかと思うことがあります。上の3点を全く満たしていない上、発行済み株式総数も少なく、流動性も低いタイプの企業が時価総額向上をめざして、個人投資家向けIR活動を行うことなどがその例です。

個人投資家向けのIRを成功させるには、まず自社の株主を満足させるためにどうするか考え、既存株主の不満を解消し、それを新しい株主へのコミュニケーションに応用することが早道ではないでしょうか。
そこで、上記の3点が重要になります。

企業にとって持続的な成長は不可欠ですし、個人投資家のベンチマークは相当低利なのですが(一説には個人投資家のベンチマークは国債かも、とおっしゃる専門家もいます)それも満たしてもらえないのでは株式を保有する意味がありません。また、個人株主(投資家)は機関投資家に比較すると情報弱者であることから、積極的にコミュニケーションを取ってくれる企業に対する満足度が高くなり、長期保有のインセンティブとなる、と考えることができます。

情報開示という点では、個人向けIRでよく事例とされるある企業の活動に模範を見ることができます。その企業は自社の既存株主に対して、優待で応えるだけではなく、自社の株主である主婦向けに健康に関するセミナーや料理教室を開催しています。その中で積極的に株主と経営者や社員とがざっくばらんに質疑応答を行う場を設け、積極的に対話・交流を図っているそうです。今後数年かけ、この活動を全国で展開するとのこと。手間も時間もかかりますが、それだけに株主は大切にされている実感をもつでしょうし、満足度は相当高いと考えてよいでしょう。ならばその満足度を図ることで個人株主向けIRの効果測定ができそうですね。そして既存株主との一つ一つの交流の積み重ねが長期保有につながってゆきます。

自社の株主が満足しないのに、新規の個人投資家に保有してもらうのは難しいでしょう。自社の既存株主に満足してもらえる経営やIRが行えてこそ、新規の個人投資家層の増加を図る施策が妥当性を持つのではないでしょうか。

実はもう一つ検証したいことがあります。消費財のメーカーがよくお客様を株主に、といいますが、それは本当でしょうか。ひょっとすると株主がお客様としてヘビーユーザーなるほど、お客様が株主になることは少ないのではないか。一度これを調べたいと思っています。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック