知性というプラットフォームー震災後1カ月のニュースから

震災から今日で1カ月となりました。被災された方はさぞお辛いことと思います。1日も早く今の状況が改善されるよう願ってやみません。

それにしても、私たちは震災と福島の原子力発電所の事故で、足元の基盤は盤石そうに見えて実は脆弱だという事実を思い知ることになりました。古の賢人は、「われわれは弱い葦のような存在である。しかしこの葦は考える葦である」との有名な言葉を残しましたがそれから何世紀たっても、やっぱり弱い葦であるという事実は変わらない。でも考えることはできるというのは重要なことですね。

震災に関する4月11日のニュースで、大変疑問に思うものがありました。東京電力の清水社長が福島県を訪問、知事に挨拶をしようとしたが、断られたというものです。なぜ、清水社長の訪問先が避難所でも福島原発の現場でもなく県庁なのか、ということにも大いに疑問を持つのですが、それはそれとして、福島県知事はどうして、面会しなかったのでしょう。

福島原発事故において最優先課題は、事故の1日も早い事態の収束と原発の被災者に対する支援です。とすれば、県知事は当事者である東電の社長から現状と見通しについて説明を聞き、当事者との直接的な情報ネットワークを強化するとともに、被災者や農家に対する賠償問題について意見交換する、という行動を取ることが合理的なのではないでしょうか。面会しない、ということで「怒り」を表現したのかも知れませんが、組織のリーダーという役職には、問題が発生した場合、それを冷静に分析し、解決を図るというミッションがあるはずですから、この知事の行動は不可解です。

もうひとつ、福島県の農産物関連のニュースについてです。野菜の加工品を製造する食品会社が、今年は福島県の契約農家と作付契約をしない、という決定をしました。実際は、自社で安全性を確かめられるまで、作付を休止しその代わり補助金を出すというものだったのですが、少々センセーショナルに伝わったため、Yahooの掲示板などで議論を呼ぶこととなりました。しかし、放射能汚染の可能性のあるものを拒否しようとする最近の消費者の行動を見ると、こうした処置をしなければ、福島産の野菜に対するアレルギーから不買に結びつくリスクがあったと考えられます。現在毎日のように、農産物が放射能で汚染されているとの政府からの発表があります。食品企業は、農産物の安全性に不確実性が見られる以上、買い付けした後に安全性が問われ、その対策を行うためのコストより補助金を出してそのリスクを排除するコストの方が少ないと判断したのでしょう。これは農家にとっても(作付してから買い取りを拒否されることよりも)、企業にとっても、消費者にとっても、もっともコストのかからない合理的な解決方法だったと理解することができます。

この件に関する企業のYahooの掲示板にはよくもこんな暴言が言えるものだ、と頭を抱えるような発言が多いので驚きます。これに限らず、企業関連のYahoo掲示板には、目を覆いたくなるような罵詈雑言が書き込まれていて、目にする度に、暗澹たる気持ちになります。人は悪い噂に翻弄されやすく、人の悪口をいうと快感を覚え、嫉妬し、保身を図るという暗く弱い面があるのかも知れません。しかし物事を冷静に科学的に分析し、合理性のある解決方法を「考える」ということで、それを克服していくことができるのではないかと思います。これが人間の知性であり、人は教育と学習によってこの知性というプラットフォームを獲得し人格が形成されていくのではないでしょうか。

この点(嫉妬と保身を乗り越えて、問題の解決を図るということ)を競争による経済合理性の実現から説明されている優れた本*1があります。
次回はこの本の内容をご紹介します。

*1斉藤誠(2010)「競争の作法」ちくま新書

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