寄稿 長井進のIR講座 第2回 個人株主との交流における重要な視点

個人株主、なかでも「お客さまファン株主」とは、その企業の商品を日常的にお使いくださるごく一般の大衆の方々である。その大衆個人の株主の方々が企業の発信する情報について、直接的にしろ間接的にしろ、どのように受けとめられているのか、この事実認識が一番肝心だと考えている。
その核心となるものが、“フェア・シンプル・タイムリー”に固執した情報開示の実践躬行である。当たり前のことを当たり前に、事実を事実として分かりやすく情報提供すること。そして、その真実を適時開示することであって、このこと自体は至極単純だと思う。これによって、企業の等身大・有りの儘の姿を理解してもらえることになり、その結果、企業価値・株式価値は、よりフェアな市場評価を得ることができると考える。

事例紹介
事例として、私のカゴメでの経験談とその効果を述べたい。
株主総会は経営の核心。1998年から株主総会の改革をスタートさせた。当時、相次ぐ企業不祥事でコーポレート・ガバナンスの重要性が盛んに議論されていた中で、経営トップ自らが取り組むことと自覚した。法の強制がなくても、企業が自主的に取り組んで改革に着手していくことは、近い将来、当り前のことになるのでは。会社の利害関係者の重要な一員は株主、という認識に立てば、株主総会は株主が出席しやすい日時を設定して、議事も分かりやすく説明したうえで、納得して決議していただくのが最善であると思料した。
まず、株主が参加しやすいように集中日を避けることからはじめたところ、出席株主は前年の5割増し120名となった。説明資料については、グラフなどを多用してビジュアル化し、理解の手助けとなるよう工夫した。そして、総会後には動画配信、質疑応答の内容、アンケート結果などウェブサイトで公開。その結果、2003年には出席者1,000名、2011年には2,000名を突破し、「開かれた総会」が実現できたと考えている。
そして、総会の出席者が増大するにつれて、質問内容も経営内容を問うものなどへと変わっていった。
http://www.kagome.co.jp/company/ir/event/meeting/notice/index.html
この変遷については、上記のサイトに質疑応答内容が掲載されている。


情報開示が企業価値を創出
株主と企業との間には、経営情報などに関して大きなギャップがある。よく耳にする株主資本コストは、株主の情報取得コストの一部であるともいえる。情報取得が難しい企業の当該コストは高くなり、それだけ企業価値は低く抑えられてしまう。
特にこうしたことを踏まえて設定したわけではないが、カゴメの企業理念の一つに「開かれた企業」というものがある。そもそも人々の健康と長寿を実現していくことそのものが、会社の事業であり存在意義である。商品はじめ、原材料の調達、製造プロセス、流通などの各サプライチェーンや経営などに曇りがあっては、お客さまからの支持を得ることはできない。そこで「開かれた企業」の実践躬行が重要になってくる。これまで“フェア・シンプル・タイムリー”な情報提供を実践してきたが、最も大変だったのは、実はフロントランナーとしての社内の意識改革だった。どこの企業もそうだと思うが、前例がない事象の壁である。
このようなことがありながらも、社内の意識改革を実行できたのは、やはり経営トップの覚悟があったから。これは重要なポイントである。

顧客を株主へ、「お客さまファン株主」づくり
「開かれた企業」とはお客さまに対する姿勢。会社の商品を購入してくださるお客さまに経営情報をしっかり伝達することで、それは会社そのものを購入してくれるのではないかと考えた。調べてみると、株主は通常のお客さまの10倍以上の商品を購入してくれていることがわかった。金融機関等との持ち合いで株式を持ってもらうより、商品を10倍以上購入してくださる多くのお客さまに株式を保有してもらったほうがずっといい。そこで、持ち合い株式を解消し、お客さまに購入してもらうことにした。そのため証券会社にもお願いして、放出してもらった株式を細かく売り出し、且つ株主優待制度を充実させた。「本当に心から会社の商品が好きなお客さまを株主としたい!」この会社の意思を明確にした。その上で「一緒に会社の企業価値を創造してください」というメッセージと行動を株主総会や対話と交流の場で訴え続けた結果、現在「お客さまファン株主」が17万名にまでなった。

                                                                 以上
第3回はめざす株主構成について検討を進めます。

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