寄稿 長井進のIR講座 第3回 株主構成と企業価値

前回は、カゴメの株主が17万名までになったことをお話しした。個人株主が増加したことによるメリットは、なんといっても時価総額の増大、高止まりである。あの日経平均が半減したリーマンショックの時でさえ、カゴメの株価は2、3割程度の下落に止まり1,500円前後で推移していた。時価総額と株主資本・純資産とのかい離は大きく、PBRで見ると1.6~1.7倍の水準で推移して、最も高いときには2倍を超える時期もあった。

反対に個人株主が増加して機関投資家の存在感が希薄になっていったことは否めない。このことで証券アナリストのカバー数が低下し、ピーク時には9社のアナリストレポートを数えたが、それが一時2社まで減少した。これによるマイナス面は、中期計画や増配・業績修正等イベント情報に関するマーケットへのアナウンスメント力が相当弱くなっていた可能性がある。個人株主と機関投資家の比率は現在3:1だが、この比率の黄金比、バランスはどう考えればいいだろうか?


お客さまファン株主は基本1単元!
ところで、カゴメの株主は現在17万名だが、信託銀行が提供する資料では2001年から2012年までの11年間で、延べ31万名が新規株主として誕生している。それとこの期間で一旦売却後に復活した2万名を足し合せると33万名が創出されたことになる。そして、この約半数が今でも個人株主として残存しているのだ。当該期間のマーケットデータは確認できないが、信託銀行が作成するデータベースからは、約1,600社平均の5年経過後の残存率は33%となっていて、同期間のカゴメの残存率は51%、相対的に高い数値といえそうだ。

この要因の一つには、1単元株主が多いことにあると考えられる。一般消費者より高いロイヤルティの「お客さまファン株主」を強く意識して、主婦層をメインターゲットに年二回の株主優待制度を設計した。これによって1単元株主は直近で全体の約8割・13万名余りまで構成が高まっている。1単元株主は保有そのものが目的とも考えられ、多少の変動では売却せず長期継続保有している。結果、“株式”プレミアムが付与されて株式価値を高めているのではと考えている。

現在のカゴメの株主構成をみると、創業家と取引先関係で全体の約半分、残り半分のうち四分の三が個人株主、後の四分の一が海外を含む機関投資家である。前者約半分の方々は、平常時ではサイレント株主とみなし、残り半分の株主行動が株価形成に影響をもたらすのではと考えた場合、繰り返し述べるように、後者約半数の株主ひとり一人に、“フェア・シンプル・タイムリー”に情報を伝達することが重要だ。多くの企業での個人株主は情報弱者といえるため、機関投資家に比べてイベント情報の捕捉がどうしても少なく遅れがちになる。この『差・ギャップ』を出来るだけ解消していくことが重要だと考えて活動してきた。その結果、情報開示に対する個人株主の満足度が高まっていくことで株式価値によい影響をもたらした可能性があるのではと思っている。

つまり、情報の対称性は株主資本コストの低減に影響を及ぼすのではと考え、機関投資家と個人株主の資本コストを仮定してみた。機関投資家はCAPMで算出し、個人株主は配当利回りと優待利回りを合算したもので算出。すると、2011年3月期では、機関投資家4.90%に対して個人株主は2.26%となる。これに株主構成を使って加重平均した当該株主資本コストは2.89%となった。この数値で株価を算出すると、実際の株価とは僅か+4.5%の近似値になった。因みに、CAPMからの理論株価とは+66%高くかい離している。

次回に続きます。

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